活動記録

伝統工芸展総裁賞受賞作品展示解説会

日時:2021年4月6日 5:30~ 4回入れ替えによる

 会場:稽古堂 3F研修室


コロナ禍の中、東京での本展、仙台の移動展共に足を運べなかった方々のために、会津漆器協同組合と会津塗技術保存会の共同開催で展示解説会を開きました。 こちらも、残念ながら、関係者限定、少人数入れ替えとなりましたので、皆様にご覧戴けるよう作者解説部分を動画にいたしました。


根津美術館学芸員 永田先生による解説文

   


材料と技法

乾漆

麻布を芯材に使い型の上に漆で張重ねてボディを作ります。2ミリほどの薄手に仕上げています。 

実は楕円形

一見真円に見えますが、わずかに横に膨らんだ楕円形です。真円の人工的なイメージを避けた、よりテーマに相応しい形です。楕円形のため、暈かし塗の部分に轆轤が使えず、三本の刷毛を使い分けるというかなり難しい作業になっています。

貝と平文

蒔絵の仕上げのアクセントに見える貝(夜光貝に伏彩色)と平文ですが、厚みがあるので、実際には一番始めに貼られています。緻密な計画性が必要な作業です。

隠れた色彩

白と黒の対比が印象的ですが、氷壁の表現には、主となる銀の他に、常色(銀の含有が多めの金粉)や金粉も使われ、更に、すれぞれの部分で塗込漆の色を変えています。微妙な色の変化により心地よいリズムが生まれ、単調さを回避しています。

多様な質感

色幅を抑えながら、砂糖炭や暈し網の使用による凹凸感と平文や銀露玉の金属光沢の対比、最後に厚めに盛り上げられた上絵の黒漆の柔らかな艶など多様な質感を盛り込むことで、冬景色の中に秘められた自然の千変万化の見事な抽象化表現になっています。